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FASHION 2018.10.17

NIKE のコラボを支える重要人物 Fraser Cooke インタビュー

9min

FRASER COOKE x SSENSE


彼と顔を合わせ、打ち合わせをしない限りナイキとのコラボレーションは夢のまた夢。そう、彼はナイキのコラボレーションのキーパーソン。

今回、SSENSE (エッセンス) が、そんな彼の貴重なインタビュー記事を公開した。ナイキファン必見の内容となっているのでお見逃しなく!

UNDERCOVER (アンダーカバー) の高橋盾、コム・デ・ギャルソンの川久保玲、Craig Green (クレイグ・グリーン)、Off-White™ (オフホワイト) の Virgil Abloh (ヴァージル・アブロー)、sacai (サカイ) の阿部千登勢、ACRONYM® (アクロニウム) の Errolson Hugh (エロルソン・ヒュー)、そして Dior (ディオール) のアーティスティック・ディレクター Kim Jones (キム・ジョーンズ) まで、これらデザイナーたちには共通のスニーカー繋がりがある。

それは今回紹介する Fraser Cooke (フレイザー・クック) である。ナイキのグローバル インフルエンサー マーケティング スペシャル プロジェクト シニア ディレクターを務めるクックは、ナイキのスニーカーとデザイナーとの全コラボレーションの陰の立役者だ。アンダーカバーの React Element 87 (リアクト エレメント 87) から CDG Homme Plus の Air Max 180 (エアマックス 180) まで、ファッションブランドとの話題のコラボレーションで、彼こそがナイキにおける真のゲートキーパーなのだ。

ナイキが競合に先駆けてパートナーシップを立ち上げたのもクックのビジョンであり、彼は、自らの本能に従って進むべき方向を定めていく。アンダーカバーの高橋盾とのコラボレーションを例に取ると、クックと高橋は、2010年の公式にナイキとのコラボレーション開始が決まる何年も前からの友人だった。クックは完璧なタイミングを待っていた。そして今や、一緒に手がけたシューズは7つ以上に及び、どれも非常に高い評価を受けている。デザイナー固有のクリエイティブなアウトプットとプロセスを尊重し、それをナイキという巨大装置の中に組み込んでいく方法を探していく。ファストファッションの時代にあって、クックがこれほど特別な存在であり続けるのは、彼は時間をかけるのを恐れないからだ。

51歳のクックは、複業をこなす仕事人の元祖であり、その履歴書はまるでスニーカーとサブカルチャーの入門書のようだ。90年代にロンドンで名を成したクックは、10年以上にわたり Cuts Salon でヘアスタイリストを務め、レコード レーベル Mo’Wax の A&R であり、DJ であり、Hit and Run と The Hideout のファッションバイヤーであり、さらには The Face や i-D のライターでもあった。

友人の Simon Porter (サイモン・ポーター) と Michael Kopelman (マイケル・コペルマン) と一緒に始めたショップ Footpatrol 代表として、クックは2003年にナイキのチームにロンドンを案内し、その後ナイキに雇われた。ナイキでの彼の肩書きは、彼の仕事を要約して説明するのは不可能だということをよく表している。誰であれ、自分のポートフォリオにナイキとのコラボレーションを加えたいデザイナーは、クックとのミーティングを取り付けなければならない。

ご存知メンズウェアデザイナーの John Elliott (ジョン・エリオット) は、クックに会うチャンスを得たときについて、GQ のナイキ特集で詳しく話している。ミーティングは4時間にも及び、そこから複数のコラボレーションが生まれた。エリオットは「同様の機会が100万回あれば、その100万回、馳せ参じる」つもりだと話している。

今回、貴重な長編インタビューの機会を得て、クックの本拠地でもある日本の Breakfast Club Tokyo にて、このコラボレーションの達人の仕事の流儀についてじっくりと話を聞いた。


Interview: Romany Williams
Photographer: Yuto Kudo


あなたの仕事の中心は、クリエイティブなパートナーシップを築き、育てることにあると思うのですが、あなたのコラボレーション術について話してもらえますか?

まず第一に、コラボレーションじゃなきゃ実現できない何かがなければ、誰かとコラボレーションする意味はないんだ。時間をかけるだけの価値がなければならない。かっこいいのは誰かとか、人が面白いと考えるのは誰かということだけで進めるのは、絶対にまずい。ふたつの存在が一緒に何かを作るには、具体的で、れっきとした理由を見つける必要がある。それが出発点。ナイキの観点から言えば、うまくいくやり方は、他の誰かと一緒に作ることで埋める必要のある「欠けた隙間」はどこにあるのか、何が自分たちにはできないかを考えるということだ。

その隙間を埋めたデザイナーを具体的に挙げると?

sacai の千登勢の場合、ある種の美的なディテールのデザインや、アイデア、色、レイヤーの重ね方、シルエットなど、彼女が本当に得意なものを加えてくれた。アイコニックな商品を取り上げて、それとマッシュアップする。ひとたび人と一緒に作業を始めると、時間が経つにつれ、どんどん良くなっていくから面白い。でも、最初から完璧なものが見つかることはまずないね。一緒に作業するということを学ばなくてはいけないから。sacai のケースで言えば、彼女たちには明白なアイデアがあって、シューズ同士を衝突させたいと考えていた。それに対して、うちのデザインチームが「つまりこういう感じ?」と応え、そこから進んでいったんだ。

ナイキに在職中、あなたの肩書きは数回変わっていますよね。そして新しい肩書きが、グローバル インフルエンサー マーケティング スペシャル プロジェクト シニア ディレクターということですが。

本当に長いよね。まったく長すぎる。まだ今は、名刺ももらってないけど。

日々の業務はどういうものですか?

私はデザイナーじゃないから、デザインに関しては何もしない。私の仕事は、もっと調達段階との関係の管理や対処が多い。目を光らせ、聞き耳を立てている感じだね。そばにいるのも仕事だ。大抵、何かに取り掛かるより前に、ある程度の人との繋がりや関係はできている。すべてのケースではないにしろ、かなり多くのケースではそうだ。それから、ナイキの展望がどういうものかきちんと理解すること。年月をかけて、コラボレーションするのにかなり慣れてきたおかげで、落とし穴や、限界や、制限や可能性などがどういうものかよくわかるようになった。問題になりそうな話は、ごく早い段階で前もってしておくことで、プロジェクトの途中で不測の事態が起きないようにするんだ。それから、本当に退屈だけど、流通に関することもやる。双方に対して人々が持っている期待の調整もやる。

何か、コラボレーションしたくないと思わせる条件というのは、ありますか?

Instagram でたくさんのフォロワーがいる人とは、商品に関するコラボレーションはやらないようにしている。私には、この測定法が本当に意味のあるものなのか、確信が持てないしね。影響力を買う人はたくさんいるけれど、買ったところで必ずしも変化が起こるわけではないことを示すデータも多いから。

だからブランドは「マイクロ インフルエンサー」を重用するんですね。

フォロワーは少なくても、影響力はもっと強いからね。

ストリートウェア産業の萌芽から、それが完全な飽和状態になるまで、ずっと見てこられたわけですが、こうした視点を持てるというのはすごいことですね。これまで、ストリートウェアがこんな風に盛り上がると考えたことは?

いや、思ってもみなかった。私はヒップホップのごく初期の未発達の段階から今に至るまで、ずっと見てきたし、スケートボード文化も見てきた。かなり多くのものがゼロから成長するのを見てきたんだ。とはいえ、大抵は、初期段階でなんらかの価値や真実味があれば、特別なものへと成長するね。

前途有望な新進のデザイナーと関係を築くことから、長年にわたるコラボレーション相手のフォローまで、新しいものを見つけることは、あなたの仕事の一部でもあるわけですが、どのようにして、新奇さを求める消費者の貪欲なニーズを掴んでいるのですか。

「新しい」というのは、実際のデザインに対抗する精神でありうる。 Supreme (シュプリーム) は、文化の文脈でモノの位置付けをするといいう点では、本当に良い仕事をしている。彼らは、社会や文化に内在する価値がどんなものか、本当によくわかっている。シュプリームは今のカルチャーにおいてとても影響力が大きいから例に挙げるけど、彼らは、ある種のサブカルチャーのレベルで歴史的に価値があるものの「いいとこ取り」がすごくうまいんだよ。他にも、Matthew Williams (マシュー・ウィリアムズ) みたいに、テクノロジーやサステナビリティに関心を持っている人も中にはいる。彼と一緒に仕事をするのはすばらしかった。イノベーションとテクノロジーに関わることだったからね。

これまであなたがやってきた、他の様々な仕事についても聞かせてもらえますか。あなたの職業の変遷を見ると、とても自然に現在に至ったように思えますが、何かキャリア プランがあったのでしょうか。

プランはないよ。まったくなかった。今ではそういうのは普通じゃないだろうけどね。最近の若い人たちは、自分が何をしたいのか、本当によくわかっている。当時の私には、皆目、見当がつかなかった。

高校はどうでしたか?

16歳で卒業して、その後は、それ以上何も勉強しなかった。何もね。両親は離婚していて、母がひとりで育ててくれていた。だから基本的には、家を出る必要があったのと、お金が必要だったんだ。学校の成績はいつもかなり良かったけど、すごく怠け者だった。難しすぎると思ったものは、何であれ、一切手をつけなかった。自分が自然と簡単にできることばかりやる傾向は、今もそうだ。情熱と興味にしっくりとはまるものをやる。本当にそれだけだよ。

思い通りのキャリアを見つけるという点に関して、努力や運、情熱と興味の関係について、聞かせてもらえますか? 複雑な二項対立ですが。

努力はその一部ではあると思うけど、私の周りには、従来の意味で言えば、私よりもっと努力している人がいるからね。でも多分、私がやっているのは自分の好きなことだから、あまり仕事という感じがしないのかもしれないな。私の場合の「普通」はそれほど普通じゃないと、他の人に指摘されるんだけど、私にはそれがよくわからないんだ。例えば、常にあちこちを飛び回っているのだって、特権だよね。私はとても恵まれてる。学校にいた頃のことを考えれば、今の自分の状況は、当時の期待をはるかに超えている。本当の本当に、私は運がいいんだ。

スニーカーの売り上げは、近々ハンドバッグの売り上げを超えると予測されていて、どのデザイナーもイットバッグだけでなくイットスニーカーも作る必要がでてきました。新しいコラボレーションを考えるとき、この点はどれほど影響してきているんでしょうか。イットスニーカーを追求する必要を感じますか?

ナイキのポイントは、私たちには他のブランドには作れないものが作れる点にあると思ってる。だから私たちは常にフットウェアにおけるイノベーションに向けて努力していて、そこに真の物語を作り出そうとしているんだ。そこで重要なのは、ちょうどよいタイミングの、ちょうどよい文脈において、ふさわしい人を集め、ふさわしい商品を作ることだと思っている。

そこでバランスを取るのはかなり難しそうですね。どのセクターでも未来は自動化に向けて進んでいて、ニュアンスや直感に基づいたコラボレーションよりも、もっと決まった方式に基づいたコラボレーションが主流になってきているように思いますが、この点について不安は?

まあね。でも、理容師の仕事は自動化できないと思うんだ。深夜放送で Flowbee ヘアカッターみたいな自動化の試みは見たことがあるけれど、ひどいもんだよ。私がいつも思うのは、すべてが滅茶苦茶になって、マッドマックスのような世界になったとしても、少なくとも自分には手に職があるから、まだ必要とされるだろうってことだ。人々が髪の毛を生やすのをやめない限り…でも、どうかな。


ssense.com






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