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FASHION 2017.12.20

ブレンドン・バベンジンが NOAH のルーツを語る

13min

NOAH と海を漂う

ポストパンクシーンを牽引し、様々なアーティストに影響を与えてきた UK バンド The Cure (ザ・キュアー) とのカプセルコレクション が記憶に新しい NOAH (ノア) を手掛ける Brendon Babenzien (ブレンドン・バベンジン) が、NOAH チームと写真家 Benedict Brink (ベレディクト・ブリンク) を連れ立ち、故郷であるロングアイランドに訪れ SSENSE (エッセンス) に NOAH のルーツやデザインについて語った。

グラフィックデザインについて、Supreme (シュプリーム) のクリエイティブディレクター時代に何を学んだかバベンジンに尋ねると、彼はこう答えた。

難しい質問だな。作る端から、即売り切れるようになったから。

自然発生的に脱皮を遂げた NOAH は、シュプリームのスケーターヴィジョンをはるかに広大で複雑な海の領域へと展開する。バベンジンにとって、海とは、NOAH ブランドを理解する鍵に他ならない。昨日のサーファーは今日のクリエイティブディレクターの業界にあって、ビーチライフの平等主義的な DIY 精神は、ひとつの共通言語となった。すなわち、 海は持続可能な実践を標榜する NOAH の倫理的基盤を指す存在なのだ。

トム・ベットリッジ: NOAH は、とても幅広い顧客層を持っているようですね。ストリートウェアと言うこともできますが、プレッピー ブランドの Vineyard Vines が好きな bro (サーフィンやパーティーが好きな体育会系の白人男子) でも、シーホースハットを選ぶんじゃないかと思います。

ブレンドン・バベンジン: まさにオレの人生そのものさ。オレは、ロングアイランドで、変わり者のキッズたちとスケートやサーフィンをして育ったんだ。でも、その後、高校に行って、今や立派な Vineyard Vines 派といっしょにスポーツをした。オレは、そういうふたつの世界を、分けて考えたことがないんだ。不思議かもしれないけど、オレの中では全員が共存してるんだ。特に、海の近くに住んでる人間に関してはね。貝の漁師やフェリーの操縦士みたいな労働者階級と、自分のビーチハウスを持っているような金持ちの間に、奇妙な力学があるんだ。実際、好きなものやら、愛着を持っているものやら、文化やら、どっちも共有しているものがたくさんある。世界のどこへ行っても、海が好きな人間は、金持ちとか貧乏に関係なく、すごく共通点があるんだよ。

あなたは、サーフィンやスケートをして育ったんですか?

オレは、1976年からスケートをしてる。クレイジーな昔風のスケート。Logan Earth Ski のボードに、Road Runner のウィール、ACS のスケートボードトラック。スケートして、サーフィンして、スノーボードしてた。

いつの時代も、サーファーやスケーターは企業精神が旺盛ですね。あなたの世代でも、ブランドを始めている人が多い。

サーファーは完全なるカウンターカルチャーだったし、スケートはこの世にある最もクリエイティブなもののひとつだ。そういうキッズたちは、日常的に、面白いものを作っているんだ。ボードのデザインやアートは、その反映だ。全部スケーターから生まれたんだ。外に注文したものじゃないんだ。

さらに言えば、どこへ行っても受け入れられるわけではないから、自分でものを作らなくちゃいけないということですね。自分が欲しいスタイルがあれば、自分で Tシャツの会社を立ち上げないといけない。

そういうこと。超がつく DIY 文化だし、とてつもなくクリエイティブなことだ。スケートやサーフのカルチャーのために何かを作ってくれる者はいなかった。だから、自分たちでやらなくちゃいけなかったんだ。

そのようなカルチャーを象徴するブランドを、自分でやりたいと思うようになったのは、どういうきっかけだったんですか?

服を作りたいとハッキリ思う前に、オレは服が好きだということはわかっていた。センチメンタルに聞こえるかもしれないけど、オレはその頃、まだ13歳だったんだよ。 13歳にして、服はとても重要なものだった。自分が何者かを証明するものだったから。年齢的に、まだ自分の信念を理知的に語ることができないからね。まだ、ただの半人前、ピュアな感情だけの存在だから。当時の自分の服選びの基準は、何よりもまず個性を表現することだった。わざわざ、つるんでる友たちの格好と合わせるつもりなんかなかったよ。13歳の俺はピンクの花柄シャツを着るもんじゃないのか、なんてことは、本当にどうでもよかった。そんなことは気にしないで、ただ自分が着たいものを着てた。

なんていうか、別にパンクじゃない、と。

オレの友だちはパンクですらなかったよ。オレが付き合ってたスケーターキッズたちは、よそ者だったんだ。地元のヤツらは皆普通だった。わかるだろ? 野球やサッカーをやる普通の少年さ。俺はラクロスをやっていたんだ。でも、サーフィンをやっていたのは、全校生徒でオレだけだったと思うよ。一緒にスケートやサーフィンをやっていたヤツらのほとんどは、他所から来てたんだ。

インターネット以前に、どうやって、そんなふうに人と知り合っていたんですか?

イースト・イスリップのサーフショップで働いてたから。Rick’s Surf Shop という店。だから、いろんな人に会ったんだ。

それは、あなたが育った場所ですか?

そう。街があるだろ? で、ハンプトンとモントークがあって、その間にいろんなものがあるんだ。オレは、そのいろんなものの中で暮らしてた。サンライズ ハイウェイから、オレの家が見えるんだ。オレは高速道路のサービスエリアの中古車売り場の裏で育った。前は、シェルのガソリンスタンドでスケートしてたよ。ペンキを塗った縁石があったから。そこであらゆることをやったよ。ラクロスを練習するのに、壁に向かってボールを投げたり、縁石を使ってスケートしたり。サンライズ ハイウェイに車が走っていない夜は、中央分離帯の壁を使ってスケートをしたね。壁の下に小さな土手があったから。

あなたのデザイン プロセスがどういうものなのか、興味があります。特にグラフィックに関して教えてください。

プロセスは本当にシンプルだよ。グラフィックよりも、自分の好きな素材にこだわってるんだ。まあ、Tシャツだと、カルチャー的な表現をするのはグラフィックの役目だからね。オレたちは、ユーモアがあって、賢くて、頭も良くないといけないから、目標はとても高く設定している。それに、オレたちは必ずしも攻撃的であろうとは思っていないから、オレたちとのあいだに相関性がないとだめだ。

スケートはこの世にある最もクリエイティブなもののひとつだ。そういうキッズたちは、日常的に、面白いものを作っているんだ。

 

それは、以前のものが発展したんでしょうか? それとも、何か、別のものなんでしょうか?

別物。でも、わかってきたのは、とにかく、他の誰も手をつけないものがたくさんあって、オレたちが自由にいじれるってことなんだ。例えば、このペリカンの Tシャツを見てくれよ。これは、オレたちが見つけた変な古いシャツが元になってるんだ。これ、ペリカンだぜ。ペリカンがどれほどカッコよくなれると思う? でも、この赤い色を見ると、凶暴でクレイジーに見える。ペリカンには、もともとカッコ良さが備わっているんだ。そもそも海の鳥なんだから。

ペリカンを見ると、いつもギャング映画の金字塔である「スカーフェイス」の例のシーンを思い出します。ペリカンは、実は結構、獰猛なんですよね。

その通り。オレたちは、使えて、攻撃的で、それでいて自分たちらしいものを見つけたんだ。でも、それには、物の裏側を見て、そこに表面以外のものを見られるようじゃないと、ダメだ。裏側に何もありませんでした、ではダメなんだ。そういうのは、単純に見た目はいいかもしれないけど、必然性がない。

精神分析の父フロイトは、かつて、良いジョークは仲の悪いカップルを結婚させる僧侶のようなものだという言葉を残しました。いい Tシャツは、相性の良くないものを結びつけて生まれるような気がします。

たまに文字のグラフィックを出すんだ。例えば、ロングアイランドのグラフィック。基本的に「俺はロングアイランド出身だ。悪口を言いたいヤツらは放っとけ。オレはロングアイランドが大好きだぜ、クソ野郎」って意味。これは、郊外出身のキッズたちへのメッセージなんだよ。オレたちが言いたいのは、自分の生まれ育った場所をよく見ろってこと。人生で何をするにせよ、生まれた場所が人を作るんだからね。生まれた場所も、立ち止まって見渡してみれば、多分たくさんクールなものがあるはずなんだ。いつも外ばっかり見ていたら、目の前のものを見逃してしまう。恰好のスケートのスポットとかね。目と鼻の先に、ガレージでアルバムをレコーディングしようとしているヤツがいるかもしれない。誰にも知られていないけど、最高のミュージシャンだったりね。まあ、その Tシャツっていうのは、そんなことを意味しているんだ。文字通りに説明すると、そうなる。

今日、「支配集団」と呼ばれる人は、皆、自分の生まれた場所とか、自分が何者か、ということを表現しているだけのように思います。それは Raf Simons (ラフ・シモンズ) のような人にも見られる傾向で、彼も、ベルギーで過ごした10代をよく引き合いに出します。それは、けっして恥ずかしいことなんかじゃなく、十代の頃の経験を受け入れることだと思います。

例えば、ニューヨークとかロサンゼルスとか、世界の大都市で育ったキッズたちのことを考えてみろよ。そういうヤツらは、まず間違いなく、クールだ。都会で育ったら、自然にそれらしくなるんだ。でも、すごくクールだからこそ、怠惰なことも多い。そういうクールなアイデアに目をつけて、それを実際に広めるのは、郊外で生まれたキッズなんだ。郊外のキッズには、都市のキッズたちに必要のない衝動というものがあるからね。例えば、ハードコアミュージックをやっているのは、皆地方のキッズたちだったり。郊外は、物事をより遠くまで運んでいくのさ。

メンズウェアは、長い間、単なるユニフォームでした。この仕事をしているから、この服を着る。ギャングの一員だからこの服を着る。

オレはスケートをする。だからこの服を着る、ってね。

それが今や、服を買う男性がファッション業界の成長の鍵になっているわけですが、まだ思春期の段階にとどまっています。私には、NOAH が、この段階を乗り越えようとしているように思えるのですが。

ファッション業界っていうのは、大体、この流行はもう終わりました、って論法で新しいものを売る仕組みなんだ。タックの入ったパンツをバカにした時代もあった。でも、タック入りのパンツを着こなす方法なんて、数えきれないくらいたくさんある。80年代には流行っていたわけだしね。だから、何かがもう流行遅れだと言い切るなんて、馬鹿げてるんだよ。スタイルを選ぶときには、自分が着たいものを選ぶ自由があるべきなんだから。NOAH はファッション業界には属さない。ファッション業界が何をしたって、オレたちは気にしていない。オレたちは、街角の小さな店に過ぎないから。

あなたたちが売っているものは、もっと民主的ですよね。

比べ物にならないくらい民主的さ。インターネットはあらゆることを民主的にした。ウェブサイトやオンライン販売がなかったら、オレたちが今やってことはできなかっただろうね。インターネットのおかげで、この場所から、世界中の誰にでも売ることができる。

面白いのは、あなたは、言わば過去に作られた大量生産のデザインをハッキングして、そこに新しいひねりを作り出しているという点です。

昔の大衆向けのデザインは、本当にすごくいいからね。でも、デザインに足りないのは、生地との組み合わせだと思うんだ。すごく偏ってると思ったんだ。皆、欲しがるのは見た目だけなんだ。機能や耐久性とか実用性には、それほど興味がない。オレにはそれが必要なんだ。

オンラインで購入する場合は、着心地すら関心がないんじゃないでしょうか。

このシャツがこの着心地じゃなかったとしたら、オレは嫌だな。

郊外は、物事をより遠くまで運んでいくのさ。

この「一生モノ」という考え方が、デザインによって歴史と必然的に結びつくのは面白いですね。例えば、40年ほど長持ちするものを、どう作ればいいのか。40年後を見る必要があるでしょうね。

面白いことに、オレはヴィンテージをたくさん買うんだけど、コレクターアイテムのようなヴィンテージは買わないんだ。意味がないから。1945年製のレザージャケットを買うのは、オレの趣味じゃない。そのかわり、70年代や80年代の変なものを買うんだ。80年代には、なかなかいいものを作ってたんだ。作られてから20年も30年も経ってるけど、布地も持ちこたえてるし、縫い目も緩んでない。20年後、オレが作ったシャツを見て、同じようなことを思ってくれる人がいたらいいね。店に来てくれるお客さんの中には、14年前にウチで買ったジャケットをいまだに持っていると言ってくれる人がいるんだ。

このバーシティ ジャケットは、何のチームを代表しているんですか?

これはチーム用じゃないんだよ。「N」のロゴが前についているんだけど、ニセモノと闘っているオレとしては、これは絶対ホンモノじゃないといけない。ホンモノだからこそ、このクロスカントリーの要素に意味がある。オレは、ほぼ毎日ランニングするからね。何度も繰り返し使う要素が幾つかある。例えば、チームの要素には聖人ミカエル (Saint Michael) を使うとかね。単に Michael と書いてあるだけだけど。

誰でも、守護聖人が必要ですからね。

その通り。別にそんなに信心深くはないけど、聖人ミカエルは大好きなんだ。雲の中から現れるミカエルのタトゥーを彫ってるぐらい。

ストリートウェアが多くの人を魅了してきた理由は、それが根本的にアイデンティティを表現しているからだと思います。そして、あなたが操っている非ストリート的アイデアでも、このコンセプトを利用しているように思います。

オレたちは、ランニングを引き合いに出し、海を引き合いに出し、スケートボードを引き合いに出している。俺たちにできるのはそれだけだ。なぜなら、実際にオレたちがここでやっていることの一部だから。登山のコレクションなんか絶対にやらないのは、オレが山に登らないからだよ。

それに、登山者に遊びはないですしね。きちんとやらないと、死ぬこともあり得る。

登山は文化的だっていう見方もあるし。だから、ありとあらゆるクールなグラフィックやアイテムが作れるわけだ。オレたちは、そういうことはしない。オレたちのやることは、すべて、リアルなんだ。同時にバラエティも豊かだ。これはいいことだと思う。この店にキッズたちが来て、ぶらぶらして、何かを買って行く。格好を見る限り、同じグループのメンバーには見えない。店で売られている時は筋が通っているけど、個々の手に渡ると違ってくるんだ。例えば、あるヤツはロングアイランド Tシャツを買って、他のヤツはクルックド・ラブ Tシャツを買って、もう1人はストレート・エッジ Tシャツを買う。そいつらは絶対、同じようには見えないさ。

全て、ポスト・サブカルチャーの領域に踏み込むものですね。

世代間の断絶は、絶対あるね。壁は消えつつあるけど。仕事のとき、毎日、オレは今着ているような服を着るけど、必要なときのために、一応タキシードも持ってる。おかしいけど、スーツを着るべき場所であれば、オレは喜んで着る。面白いしね。でも、ここんとこ、男が毎日きちんと身なりを整える風潮が目につくんだ。何というか、クレイジーなぐらい、めかし込んで。

例えば、ポケットチーフとか?

本当にやってるさ。面白いのは、それがカッコいいことなのかどうか、オレにはまだ判断がつきかねているってこと。まだ分からないんだ。確かに見た目はいいんだけど、全然実用的じゃないから。それって本当に自分自身なのか? その服は本当に自分なのか? それとも、お前は何かを投影しようとしているのか? そういう疑問があるわけよ。まだオレの中では、ちゃんとした決断はできていない。判断なんてしないかもしれないけど。

海という、境界のない水の世界という考え方に戻るようですね。

NOAH のオフィスは、予想できない個性や関心が混じり合ってる。予想だにしないようなことさ。奇妙なものを奨励しているオレたちにとっては、それが完璧なんだよ。なんであれ、クールなんだ。そのままでいい。昆虫が好きなら、昆虫を勉強してみればいい。ビジネスという大きな枠組みでどういう意味を持つかは別にして、それが自然な成り行きというものだ。どういう服になるか、店の見た目や雰囲気はどうなのか、自分たちをどう表現するか、それをどう伝えるか。そういうことは、全部、今言ったような核の部分から派生する話なんだ。自分を変えようとするな、これがオレたちだ、そして、もし自分なりに参加してみたくなったら、大歓迎。

登山のコレクションなんか絶対にやらないのは、オレが山に登らないからだよ。


Interview: Thom Bettridge
Photographer: Benedict Brink

SSENSE.com





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